第12回: おもてなしの心

最終回・おもてなしの心 「和の食文化」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されたニュースは今年日本中を沸かせました。その中の大切な要素に「おもてなし」があります。
 本来日本のもてなしは、神様を「おもてなし」することからはじまっています。自然神や祖霊神など、様々な神様をもてなし豊漁や豊作を祈り自分達のくらしを守っていただく、おそなえした海の幸、山の幸はお下がりをいただき村人や集まった人々と煮炊きをして食べる神人共食というものです。そこでは器や決り事があり、やがてそれらが今日の暮らしのスタイルへと変化してきました。
 もてなしの工夫の第一は機能性です。サイズ、使い勝手、多様性が大切です。第二は行事性、日常と非日常、つまり普段使いとハレの時の器の使い分けです。第三は物語性、文様やそれぞれの家庭史の中で育まれてきた器です。季節感や行事、家族の器の物語、それらが「おもてなしの心」を育てていくのです。
 一つの器をめぐる物語、例えばおばあさんが使っていた鉢とか、結婚の時に買い求めた取り皿、旅先で見つけた小皿などたくさんの器の中に、多くの思い出と幸せがかくれています。それを伝えたり、もてなされた側は読みとったりそのやりとりとおもいやりこそが「おもてなしの心」と言えます。
 今年も一年が終わろうとしています。お正月の準備の中でなつかしい器を手に思い出話をしたり、新しい器を初春から使いはじめたり、器の持つ役割の大きさにふと気付かされる年の瀬となりました。